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進化する取引価格情報提供事業

 地理空間情報活用推進会議という組織がある。 内閣官房に設置され、地理空間情報の活用推進を目的として活動している。 地理空間情報に関する総合的かつ体系的な基盤の構築・法制上の措置等 ・各種計画との連携・計画のフォローアップなどを行っている。構成員は国交省、総務省、経産省をはじめとして多数の省庁が加わっている。 また、地理空間情報に係る課題認識と情報の産学官の間での共有を図り、もって、地理空間情報の効果的な活用を推進することを目的として「地理空間情報産学官連携協議会」も設置されている。



 「地理空間情報産学官連携協議会」の官界、学界以外産業界からの参加構成メンバーは次の通りである。
 衛星測位システム協議会、(財)衛星測位利用推進センター(SPAC)、特)国土空間データ基盤推進協議会(NSDIPA)、(社)全国測量設計業協会連合会(全測連)、(社)日本経済団体連合会(経団連)、(財)日本情報処理開発協会、(社)日本測量協会、(財)日本測量調査技術協会(測技協)、(社)日本地図調製業協会(地調協)、日本土地家屋調査士会連合会
鑑定協会も、先方から参加要請の声がかかる実力を身につけたいものである。

 推進会議は09年6月10日に、「地理空間情報の活用推進に関する行動計画(G空間行動プラン)(平成20年8月)」に関するフォローアップ報告 を公表している。 この行動計画のなかに(施策名) 取引価格等土地情報の整備・提供の推進が入っている。いわゆる取引価格情報開示制度である。

 (施策名)取引価格等土地情報の整備・提供の推進「整理番号73」は、『土地市場の透明化・取引の円滑化・活性化を図るため、取引当事者の協力により取引価格等の調査を行い、物件が特定できないよう配慮して土地取引の際に必要となる取引価格情報等の提供を行なう。』とある。 取引当事者の協力並びに不動産鑑定士の協力と書き込んでほしいところだが、それはさておき、当該制度は着実に進化している。

 詳しくはフォローアップ報告土地総合情報システムをご覧頂きたいが、取引価格(m2単価)別事例件数(ヒストグラム)、取引価格(m2単価)と前面道路の幅員の関係(散布図)、取引価格(m2単価)と最寄りの鉄道駅までの時間距離の関係(散布図)などが表示されるし、個々の取引情報も所在地と取引時期が詳細に表示されていないだけで、最小限必要な取引情報は開示済みであると云える。

 《 G空間行動プラン:施策別概要集:整理番号73 》
 取引価格開示施策以外の他の施策概要も、今地理情報に関して何が進められているか、何を目標にしているのかを知る上で、大いに参考になるものと考える。

 またこれらのフォローアップ報告について、コメント提出も求められている。 整理番号73:価格情報開示施策の将来着地点はさらなる開示なのであろうが、鑑定協会も将来着地点を意識した事業計画や対応事業の実施が求められていると思われる。

 何よりも不動産価格のすう勢は経済現象を反映するものであり、国や地方公共団体の事業立案や事業効果判定という意味からも地価推移動向は重要な指標であろうと考えるからである。
さらに、そのような大局的な見地でなくとも、地価と地理情報は不即不離の関係にあり、地理情報の取り扱いに関して不動産鑑定士は必要な知識や経験を積み重ねる必要があろうと考える。

【いつもの蛇足である。】
 地価調査業務も終盤にさしかかり、既に成果物を納めたところも多いと思われる。年初以来の地価変動をどのように判定したかが9月の公表時に問われるわけであるが、地価公示や地価調査について、あまり語られないが重要と思われる事項がある。

 それは地価公示も地価調査も抽出地点(設定した標準地)の地価並びにその地価推移が公表される。そこで云われる地価変動率は抽出地点の変化の平均なのである。 それが直ちに地価推移として語られることには若干の違和感がある。

 つまりこういうことである。 抽出地点は株式におけるダウ平均みたいなものであり、必ずしも全体のすう勢を現してはいない。 日本の宅地地価総額を示すものでも、総額の推移動向を示すものでもない。加重平均すら行われていない、抽出地点の単純平均値なのである。 標準地点の抽出方法については一応の作業基準が定められてはいるが、統計学的に整理されたものではない。

 算術平均だから無意味というのではない。ぼちぼち標準地抽出についての統計学的処理方法や、加重平均値や総額平均値を示す算式の開発に着手すべきではなかろうかというのである。
by bouen | 2009-07-13 14:23 | NSDI:地理空間情報


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