鑑定協会執行部への質問とご回答(1)

 06.07.08付けE.Mailにて、以下に掲載する質問書を中部区選出鑑定協会理事田中利彦氏にお預けしておきました。田中理事は去る7月18日開催の鑑定協会理事会において当該質問書を公開されるとともに、文書による回答を求められた由にございます。本日、その御回答を田中理事を経由して頂きましたので開示します。



 このような質疑の在り方が好ましいか否かについては議論があるだろうと考えます。しかし、その是非判断は鑑定協会が行うべきものであり、サイト主宰者の茫猿が行うことは不遜であり、情報の秘匿にもつながることと考えますので、頂いた文書をここに公開するものです。当然のことですが、開示文書は原文のままです。開示文書の内、下線部分が御回答です。
 もう一点大事なことがございます。回答の文責者が茫猿には不明です。
ただし茫猿に届いた文書の出所は田中理事の主宰事務所有限会社ランドフォーライフ研究所であり、電話にて田中氏ご本人に確認済みです。同時にBlog:鄙からの発信サイトに開示する件もご了承を得ております。


『証券取引等監視委員会並びに国土交通省が指摘する証券化に関連する鑑定評価に関わる問題、或いは週刊ダイヤモンド誌記事、並びに協会サイトに公表される会長談話等について、お尋ねします。』

一、会長談話の性格について
 最近、会長談話が協会サイトに掲載され、その後、日をおかずに削除訂正されたりしているが、会長は談話を恣意的に出したり削除したりしてよいのでしょうかか。 綸言は汗のごとしと云えば会長はお判りと思いますが、会長談話は外部に公表された瞬間に、協会の公式見解と見なされるものと考えます。

(質問.1) 会長談話公表にはしかるべき機関決定、または機関承認が必要なのではないか、お尋ねします。尚、承認行為はE.Mail承認或いは持ち回り承認で宜しいと考えます。

【質問.1の回答】
 従前は、鑑定協会会長談話を発表する必要性が低く、おそらく前例は無いものと思われます。従って、会長談話発表に関する規則や慣例が協会には今のところありません。
今回の問題は、事前に理事会に諮らなくてもよい事項と判断したものであり、会員に対して注意喚起を図る内容のものですから、副会長に事前配布して談話発表しました。



二、H18.06.29会長談話について
H18.6.29付け鑑定協会公式サイトに掲載した会長談話「不動産鑑定士の鑑定評価に対する社会の信頼を損なわない努力を-証券化関連鑑定評価の水準を高く確保しよう-」の内、以下に掲載する末尾既述は公式サイトに掲載する会長談話の既述としては、公私混同等の問題有りと考えますが、会長のご見解を承りたい。。
『 追って、・・・・(既に削除された文章であり掲示はしない) 』
※06.07.04に、この部分のみ削除されましたが、全世界に向けて発信されている協会公式サイトに例え5日間とはいえ公表すれば、その掲載責任は免れない。 

(質問.2) 一方的に削除すればよいというものではなく、多くの関係者はこの談話をファイル保存しているのである。然るべき削除理由をお示し下さい。

【質問.2の回答】
 週間ダイヤモンド記事が「不動産鑑定に潜む疑惑」として指摘しているのは、①会長事務所が迎合鑑定をしたのではないかという疑惑、②金融庁がJPモルガン信託銀行及び新生信託銀行を処分するに当たり関係する不動産鑑定評価に持つ疑問、③国土交通省が証券化関連鑑定評価について持つ概括的な懸念、の3つです。
このうち、②と③については協会は事実関係を把握していませんので、コメントできませんが、①については、事実関係の把握をなし得るのであるから、疑惑を否定しないと記事の指摘を認めたと会員読者に受け取られかねません。
また、①の事実は私的事実ではありますが、週間ダイヤモンドによって報道されてしまった以上、その私的事実のプライヴァシーは公開されてしまったのであるから、公開された範囲に限って公的側面を併せ持つと考えられますので、談話追って書きの形で掲載しました。
しかし、7月4日の常務理事会に先立っての正副会長会で再びこの問題を議論した結果、私的側面があるといわれている文章は削除し、別途説明文を発信したほうがよいとの結論に達しましたので削除した次第です。



三、06.06.29付け国交省徹底通知について
この06.06.29付け会長談話を掲載している最中に、国交省の06.06.29付け徹底通知が出ていたのを承知されていたのでしょうか、非承知だったのでしょうかをお尋ねします。

(質問.3) 国交省通知を知らなかったとすれば、事務局の連絡体制の不備が指摘できる。その点について見解を伺いたい。知っていながら無視したとすれば、その理由を示して頂きたい。

【質問.3の回答】
 会長談話は29日午後3時頃にホームページで発表したのであり、国土交通省の通知「徹底について」は同時刻頃専務理事が国土交通省で受け取っています。


四、06.07.07付会長談話(声明)について
06.07.07付けにて会員専用サイトに「週刊ダイヤモンド掲載記事について」と題するこれも会長談話を掲載されているが、この会長談話(声明)は常務理事会の承認を得ていると仄聞するが間違いないか、お尋ねします。

(質問.4) 常務理事会が承認しているとすれば、常務理事会が連帯責任を問われるものであり、常務会が与り知らないとすれば会長の度重なる独断専横が指摘され得ると考えますが、如何お考えかお伺いします。

【質問.4の回答】
 週間ダイヤモンドの記事については、経済関係者多くの目に触れておりますので、本会会員が関係者から事実関係を尋ねられた場合に説明ができるようにすることを狙いとしてホームページに掲載した説明であり、会長談話ではありません。
本件鑑定評価書に関する事実関係、鑑定法第42条の説明、本件鑑定評価書に関する理事会での決定、ダイヤモンド社に対して抗議するということの4点を説明しています。私的事実ではあるが週間ダイヤモンドによって公開されてしまい公的側面を併せ持つ事実についての説明です。
常務理事会はこのような説明が必要と判断しています。



五、06.07.07付け会長談話(声明)について
(1)談話は、横須賀鑑定事務所・平成16年7月30日付け鑑定評価書発行の経緯と訴訟の経緯を述べているだけであるが、週刊ダイヤモンドが記事に取り上げているのは、「鑑定法第42条による不当な鑑定評価等に対する措置の要求」等についてである。同時にこの件は前記の公式サイトに会長自身が公表するものである。
 したがって、法42条措置要求が不当であるとするならば、不当であると表明するのみでよいのではないか。もしくは措置要求を誣告と逆提訴すべきではないのか。
(2)同時にこのような私的事項に会員専用とは云え協会サイトを利用するのは公私混同である。
(3)最も問題なのは、会長談話は最後に「株式会社ダイヤモンド社に対しては、協会は、弁護士事務所を通して、記事の誤りを厳重抗議します。」と述べている。
協会会長とは云え横須賀鑑定事務所の私的事項について、協会が記事を誤りと断定し、抗議をするというのは如何なものであろうか。ダイヤモンド誌記事は措置要求申立の事実を報道しているのであり、それは会長自身が06.06.29談話で認めているものであり、誤り云々を糺すものではない。
「06.06.24・週刊ダイヤモンド掲載記事」
「06.06.29・鑑定協会・会長談話」
 同日、国交省再度徹底要請。
「06.06.29・国土地第29号・鑑定協会宛、国交省土地水資源局長徹底通知」
 会長が個人的にダイヤモンド誌記事に、何を考えようと、何を抗議されようとご自由であるが、(社)日本不動産鑑定協会・会長として為さるのであれば、然るべき機関決定の上で為されたい。
さらに云えば、どのような協会機関が承認しようとも、会長事務所が「法42条措置要求を求められている事項」は、私的事項である。協会としては会長がそのような要求を受けていることは残念であり、速やかに疑義を晴らして頂きたいが、しかし協会として公的に対応するものではないと考える。

(質問.5) 法42条措置要求に対する対抗措置をお取りになるお考えの有無をお尋ねします。

【質問.5の回答】
 週間ダイヤモンドの記事について、協会は記事冒頭の昨年の総会の状況に関する誤りを、横須賀鑑定事務所は不当鑑定としている誤りを同社に抗議しています。
週間ダイヤモンド記者から手渡された措置要求申立書コピー(氏名記載のもの)により、申し立てた者の氏名は判明しているが、現時点では会長が会員を提訴したり措置要求したりするのは如何なものかと考えます。


(質問.6) 会長がダイヤモンド誌記事の誤りと指摘される部分は、どの項なのかお尋ねします。

【質問.6の回答】
 14頁第1段記事冒頭の昨年の総会の状況の部分
「『協会長ともあろう人が、誰がみても明らかに不当な鑑定評価を認めるのか!』
『お前らは会長の言うことに楯突くのか!』
昨年開かれた不動産鑑定士協会の総会は、ある一通の不動産鑑定評価書をめぐって、罵声が飛び交う大変な騒ぎになった。」
14頁第3段から第4段に掛けての不当の指摘部分
「 ところが、この鑑定を受けて提示された新たな家賃が、周辺のビルなどに比べてあまりに高かったため、テナント側が所有者を裁判に訴える事態にまで発展。一方で不動産鑑定士からは、鑑定評価の正当性を問う声が上がった。
土地取引の評価基準である地価公示地が近くにあるのに、原宿駅近くの公示地価が高い所をわざわざ参考にして鑑定評価を引き上げていることや、周辺の地価が上昇していないにもかかわらず、賃料の急上昇を認めるかのごとく鑑定していることが、『依頼主に迎合した、高い賃料を算出するための不当鑑定』というのだ。
しかも、この鑑定評価書を作成したのが、不動産鑑定士協会の会長、横須賀博氏の事務所だったことから、批判はさらに強まる。
『トップが許されるならわれわれだって、との風潮が高まっており、このままでは鑑定士に対する信頼が根底から崩れる』とある鑑定士は月激高するなど、協会内部から倫理的責任を問う声が高まっている。
・ ・・(1文略)
しかし、両者と距離を置く複数の鑑定士が、『依頼主の意向に沿うという『意図』を持った不当な鑑定と印象がきわめて強い』と語るだけに、『不当鑑定』という疑惑はぬぐい切れない。」
15頁第2段の迎合鑑定の指摘部分
「 冒頭のビルも、鑑定評価書の作成直後、米投資銀行系のノンバンクから、米投資ファンドに転売されている。事情に詳しい関係者は、『高値で転売したいノンバンクの意をくんで不動産価格を高く評価している』と指摘する。」



六、06.07.08日経記事その他について
 会長談話を鑑定協会会員専用サイトに掲示する同じ日に、日経新聞が証券化に伴う新資格創設を記事にしている。
同じく7月当初に前後して、
「(06.07.05)国土審議会土地政策分科会企画部会不動産投資市場検討小委員会最終報告の公表」 続いて、(06.07.06)第2回「不動産の証券化に係る鑑定評価とデユー・ディリジェンスのあり方に関する検討委員会の結果」が公表されている。

 市場圏等小委員会には緒方鑑定事務所取締役・奥田かつ枝氏が加わっているものであり、
証券化と鑑定等検討委員会・座長は緒方副会長がお務めである。また増田副会長と緒方副会長は土地鑑定委員会委員をお務めである。
 国土交通省が「証券化シニアアプレイザー」という新資格創設を検討中であるということに関して、何の情報も得ていないとすれば不思議である。守秘義務があるとしても、マスコミにリークされた後であれば、然るべき対応策を検討すべきではなかろうか。

(質問.7)ことは鑑定士の証券化や収益DCF法に関する能力を疑わせるものであり、少なくとも、鑑定協会として「証券化シニアアプレイザー」制度創設を肯定するのか否定するのかの早期態度表明が必要であろうと思うが会長は如何にお考えなのかお尋ねします。

【質問.7の回答】
 証券化関連不動産鑑定に関して新規に高度な研修が必要であるという話は、国土交通省地価調査課長から直接聞いています。7月4日の国土交通省との意見交換会では、資料「最終報告の概要」に基づいて、トランスペアレンシー向上策の一つに証券化不動産の鑑定評価に関する不動産鑑定士の資質向上があるとの説明はあったものの、新資格創設についての説明は一切ありませんでした。「証券化シニアアプレイザー」という言葉が使われたのは、7月5日の国土審議会土地政策分科会企画部会不動産投資市場検討小委員会最終報告からです。この報告のうち、鑑定評価に関するものは今後、土地政策分科会不動産鑑定評価部会で検討する予定です。したがって、日経記事にいう「証券化シニアアプレイザー」なる新資格が創設されるか否かは、(検討対象になるかどうかも含めて)、今後の部会での話であり「新資格創設を検討中」というのは誤りです。


七、証券化に関して社会が疑念を抱いたり証券監視委員会等所管庁が指弾したりする事項についての対応策は、証券化関連鑑定評価書の可能な限りの公開、レビュー制度の創設等、鑑定協会自身が提案し努力して打開すべきものであり、そのような自助、自治、自浄能力が今こそ求められていると考える。
何となれば、証券化評価に関する留意事項等、多くの留意事項文書を鑑定協会は既に発行済みである。鑑定評価基準並びにそれらの留意事項文書と倫理綱領が適切に運用されておれば、証券監視委員会や週刊ダイヤモンドからいわれのない指摘を受けるはずもないのである。証券化シニアアプレイザーなどという屋上屋を重ねる制度に何ほどの意味があると云うのか、大いに疑問である。

(質問.8)新資格創設について会長のご見解をお尋ねします。
【質問.8の回答】
 証券化関連不動産鑑定評価業務を進めていくためには、不動産鑑定士がより高度かつ多様な知識等を習得し、誰でもできるようにすることが先決と考えます。従って、それを資格とすることについては考えておりません。

(質問.9)証券化関連鑑定評価書の公開やレビュー制度の創設など、鑑定協会が主体的に提言できる施策についてどのようにお考えかお尋ねします。
【質問.9の回答】
 ご指摘の点は、この度設置した特別委員会で検討するものと考えております。


 最後に、ただ今の鑑定協会を取り巻く状況は、証券監視委員会から公文書で「不十分な鑑定評価」という指弾を受け、国土交通省から「06.06.02・国土地第37号:証券化関連の鑑定評価に係る実績調査」を受け、「06.06.05・証券化対象不動産の鑑定評価等の適正な実施について、鑑定協会宛の通知」を受け、再度「06.06.29・国土地第29号・鑑定協会宛、国交省土地水資源局長徹底通知」を受けているのである。しかも日経記事によれば所管庁では新資格創設まで検討されていると云う。
 このような鑑定評価及び鑑定協会が遭遇する重大事に際して、会長事務所が「法第42条による不当な鑑定評価等に対する措置の要求」を受けているのは誠に残念である。同時に、その対応に協会サイトを利用しているように見えるのも大変遺憾な事態である。
 鑑定協会は会長事務所の私事などに左右されることなく、直面する鑑定評価を取り巻く疑惑払拭に努め、信頼性を回復しなければならないと考えます。国交省に云われるまでもなく「証券化・流動化対象不動産の鑑定評価等は、依頼者だけでなく一般投資家の利害にも関わるものであり、これが適正に行われない場合、不動産鑑定評価制度に対する国民の信用を大きく損なうこととなる。」のであり、今こそ鑑定協会の鼎の軽重を問われていると考えます。
 定款第13条の既定により「会長補佐の任」にある副会長各氏の、ただ今のご見解を求めて質問を終わります。
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by bouen | 2006-07-27 09:31 | 不動産鑑定


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