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十月一日

 十月の声を聞いた途端に肌寒さを感じるくらいの気温である。地球酷暑化は只ひたすらに暑くなるだけでなく気温変動幅が大きくなり、台風が極大化し豪雪が暴雪化するだろうという仮説を実感させる、この夏から秋への気候である。



 十月一日は鑑定士にとって特別な日である。今日は、全国津々浦々で無料不動産相談会が開催されている日である。各地の市役所や駅前で我々の仲間の不動産鑑定士が、訪れる市民の方々の不動産相談にお答えしている一日である。茫猿も今日は岐阜市役所ロビーに設けられる会場へ出向いてご相談にお応えする。

 先週末は、我が鑑定協会重鎮M氏の叙勲祝賀会が大阪で開かれたのでお祝いに行ってきました。その会場で少なからぬ方々から、新スキーム問題、REA-NET問題、公益法人改革問題についてお尋ねを頂きました。茫猿は『鄙からの発信』をお読み下さいと申し上げるのですが、i-NETは不得意だし面倒だから、今日はあなたに会えたことだから直接教えて下さいなどと云われます。それも理解できない訳ではありませんが、つくづく情報交流とか情報流通というものの難しさを思います。

  象徴的だと思えるのは、公益法人改革問題についてです。重鎮の祝賀会ですから、主に西日本在住の多くの現・元役員の方々がご参集です。そこで公益法人改革が話題になりますが、異口同音にこう話されます。「私もあなたが云うような事態が起きるだろうと懸念している。」、「多分、あなたの云うとおりかもしれない。」、「だから対策を考えなければならない。」、「それまでは、いたずらに不安を煽ったり、混乱を招かないことが肝要である。」

 つまり、こういうことなのです。「知らしむべからず、拠らしむべし」なのです。鑑定協会の少なからぬ役員氏が考える協会のガバナンスは情報の開示ではなく管理にあるようなのです。決して非開示とか閉鎖とは申しません、時期を見計らって混乱しないように情報を提供してゆく、対応策や答弁原案が用意できたら情報を開示してゆく。さて皆さんはどのような感想をお持ちでしょうか。役員氏達は我々一般会員を愚民視しているわけではないでしょう。ただ百家争鳴的騒々しさをうとましくお思いなだけなのでしょう。今や権威や権力の源泉は体力や財力・知力にはなく、情報管理能力にあるのです。こんな囁きを聞いたことはありませんか、「ここだけの話ですが」、「あなただけに伝えますが」

 実は、「公益法人改革の陥穽」という記事をアップして間もなく、某役員氏からお電話を頂きました。『あなたが指摘する懸念は昨年から話題になってますが、まだ時間もあるし混乱は避けたいから公式文書には記載していません。いずれ対策を公表しますから、・・・・・・』、暗に『鄙からの発信』記事の削除を求める意向が見え隠れするお電話でした。率直に云えば某役員氏はこう言いたかったのでしょう、『鄙からの発信記事は迷惑です。ただただ会員の不安を煽るだけですから、善処して下さい。』

 大阪からいささか寂しい感慨を持ちながら岐阜にもどりますと、こんなメールが届いていました。
 先般の本会○○委員会ではじめてリア・ネットの存在を知りました。過去の連絡文書にそういった記述なり連絡はなかったと承知しておりますが、岐阜では会員の相互連絡システム等の運用はされているでしょうか。
 ◎◎会では相互連絡システム必要性が数年前から言われてきた経緯があり、実は本年度手始めとして会員相互の情報等の連絡システムを立ち上げるべく開発に着手し、近く運用を開始することにしていました。 新スキームとの関連でセキュリティの必要性からとの説明は判らないわけではありませんが、システムの一元管理が果して、いいことになるかどうか、地域々々の需要に応じたシステムの柔軟性や独立性を損なうと反対する者も多くあり、無駄な出費となることにもなりかねません。


 REA-NETという名前が公式文書に記載されたのは、九月理事会が最初であろうと思いますが、委員会報告では昨年から新スキーム・第二ワーキング・グループでは士協会ネットワークとかREA-NETという名称を使用していました。何よりも鑑定協会2006年度事業報告と2007年度事業計画に記載されています。ネットワーク構築問題について大見出しが使用されているわけではございませんから、注意深くウオッチングしていないと見落とされるのも無理無いことと思います。この辺りは年度当初の頃にアップした『鄙からの発信』記事に何度も書いてます。鑑定協会執行部や理事会がお考えになる事案優先順位が茫猿とは異なるのだろうと思います。

 公益法人改革問題も総会議案に掲載されています。ただ一般社団法人林立に伴う問題点などという書き方はされていません。改革に伴い鑑定協会も一般社団法人となり、次いで公益法人認定を受けます。同時に全国士協会の一般社団法人化と公益法人認定を支援し、さらに連合会移行を目指しますと書かれているだけです。

 情報というものはこういうものなのです。よく云われることですが、諜報活動は007みたいなものはレアであり、公開情報の分析が大半であるというか、公開情報を正しく分析せずに007的情報に偏したり瀕したりしますと誤ることとなる場合が多い。茫猿は役員でも何でもありませんし、何も特別な情報提供者がいるわけでございません。公開情報を読んでいるだけです。逆説的な云い方をすれば、特別な情報に接し得ない立場だからこそ、何でも書けるのです。役員としての守秘義務もなければ、協会ガバナンスに協力する義務もないのです。別の局面では茫猿は地元会の皆様にこの様にお願いするのです。
 新スキーム試行でも、REA-NET試行でもリスクを取って下さい。リスク・テイクをすればしただけの見返りはあります。多少煩瑣で手間暇かかりますが試験に参加すれば、執行部や事務局から感謝されないにしても迷惑がられることはないでしょう。なによりそこでは本番までの余裕をもった習熟の機会が得られます。さらに試験試行に参加する我々自身の改善改良要望がかなえられる機会も多かろうと思います。常に受け身でいることは無難であり危険はないかもしれませんが、『茹で蛙』にならないまでも『出るに出られないぬるま湯』状況に陥る可能性は高いと思います。

by bouen | 2007-10-01 10:39 | 茫猿の吠える日々


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