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鑑定評価の近未来_1

 先日、地元士協会役員氏より次のようなご連絡を頂きました。
「都市圏と地方圏との格差が拡大するなかで、地方圏鑑定業界の充実を図るための意見交換会を開催したいから、日程を都合して参加してほしい。」というものでした。



 予定される意見交換会は、鑑定協会役員氏と地元士協会役員有志との意見交換会であり、茫猿は役員ではないけれどオブザーバーとして参加してほしいとのことでした。交換会の趣旨について茫猿が推察するところでは、岐阜会が数年前からブロードバンドWANを運用していたり、REA-NET試験運用にも積極的に参加し、地価公示のデジタル化や公示要覧のウエブ化にも取り組んでいることから、その実態を視察して活性化への何らかのヒントを得たいというものであろうかと考えます。

岐阜会のブロードバンドWAN
REA-NET試験運用
地価公示事例作成のデジタル化
地価公示、地価調査要覧のiNet化

 最後の「地価公示、地価調査要覧のiNet化」については、咋秋以来ウエブ公開しているGoogleMapを利用した公示・調査要覧である。昨日の鑑定協会メールマガジンでは「よこはま土地案内」及び「よこはまの地価」の案内が広報されていた。横浜市のホームページにおいて(社)神奈川県不動産鑑定士協会が編集協力を行った「よこはま土地案内」が掲載されており、「よこはまの地価」Googleマップ版は全国の地価公示、地価調査データの閲覧ができるという記事である。

 岐阜会の「岐阜県不動産鑑定士協会DB」(Web版 地価公示、地価調査要覧)は、岐阜会所管区域限定とはいえ半年先駆けて公開を始めていたが、広報に遅れをとったのである。広報の少しくらいの後先はどうでもよいのであるが、公示・調査要覧広報については、国交省や自治体が行うのも市民サービスとして重要であろうが、評価主体であり不動産の専門家団体を自負する鑑定協会や士協会が行うのも意味あることと考える。市民や鑑定士や不動産業界等、多様なユーザーにとって使い勝手が良く、内容的に充実した案内図等要覧を提供してゆくことは重要と考えるのである。

 (社)岐阜県不動産鑑定士協会がウエブ公開する岐阜県内の地価調査基準地及び地価公示標準地について、Google Mapを利用した要覧はGoogle Map上での市町村別検索結果の表示と、カテゴリー別一覧結果表示機能を備えており、カテゴリ別検索結果はそのままA4版にて印刷すれば地価公示要覧となります。
 最も大きな特徴は、単件印刷機能を有していることであり、該当の地点表示をクリックすれば、官公報記載事項、過去五年間の価格及び変動率、並びに所在案内図(自由縮尺)を掲載した A4単票が印刷でき、会議資料や附属資料等、多様に利用できます。
 「岐阜県不動産鑑定士協会DB
 このDBは、地価調査並びに地価公示テキストデータと国土数値情報(国土交通省)を使用しているものであり、汎用性があります。該当するデータさえ用意すれば全国の士協会で自らの広報活動の一環として直ちに運用が可能なシステムである。

 折りしも取引価格情報開示制度が本格運用される初年度である。そこには(取引価格情報開示制度事業DB)、一次データ(所有権移転登記データ)、二次データ(取引当事者照会回収データ)、三次データ(照会回収データについて属性調査結果データ)等が膨大な量を蓄積しつつある。鑑定業界は、この宝の山をどのように利活用するのか、そしてその成果を如何に社会に還元してゆくかが問われる状況にある。これら膨大なデータの有効な利活用とその成果の社会還元は、焦眉の急と云えるのではなかろうか。鑑定協会や士協会がもたもたしていれば、学界などからデータ利用の為の開示要請が起きるであろう。

 三次:属性データの調査蓄積に大きな汗をかきつつある鑑定業界が、自らの貢献とデータの有用性に無知であり、いわば宝の山にアグラをかいていれば、それは畢竟、社会から「貴重な国民資産の退蔵」であるという非難を浴びることにもなりかねないと考える。

 一次~三次データの開示も含めて、不動産鑑定士はこれら貴重なデータの有効活用と社会還元を提唱し自ら実行すべきであると考える。そういった地道な一見して迂遠に見える活動こそが、結果として不動産鑑定士のプレゼンスを向上させてゆく近道であろうし、ひいては業容拡充にもつながると考える。
 何となれば、三次データを地価公示等事例作成にのみ利用するのであれば、それはあまりにも消極的かつ部分的利用でありデータの存在意義や価値に無理解であると云わざるを得ない。何よりも、一次データ提供から二次データ回収に協力を頂いた市民に対して申し訳ないことと考えるのである。

 
by bouen | 2008-02-20 15:14 | 不動産鑑定


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