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地理空間情報活用推進基本法

 年若の畏友K.A氏より、貴重なサジェッションを頂きました。日頃GISの活用を提唱しながら、迂闊にもこの法律の施行を知りませんでした。大変に興味ある情報であり、鑑定業界にとっては見過ごすことのできない法律の施行です。



 考えようによっては、非司法競売手続導入問題も、公益法人改革問題も、この法律の前では色褪せて見える些事であると云えるのである。我々、不動産に関わる者にとって年来の課題がGISの活用であった。その活用にこそ不動産鑑定評価の将来がかかっていると言っても過言ではなかろう。

 不動産鑑定評価が所在地番とか施設距離とか地域的都計規制とか、大半が地図に係わる情報を取り扱い、データを収集し、分析し、解析し、評価額という結論に至る業務である以上、地図を離れては存立し得ないのである。一般の単件評価においても地図は重要であるが、地価公示、地価調査、相続税評価、固定資産税評価など集合的一括評価(面的評価ともいう)において各評価対象標準地等の均衡を図る上で、地図情報は欠かせないのである。また取引事例情報や賃貸事例情報の分布や散布状況を確認する上でも地図情報は欠かせないものである。

 制度創設以来、過去四十数年の間は地図に関してアナログ的情報しか得られないことから、鑑定士は国土地理院地図や市区町村管内図・都計図や市販地図を利用し、キルビメーターや三角スケールを使用して仕事せざるを得なかったのである。
 近年はデジタルマップが様々な媒体で入手可能になり、利用ツールやソフトも多くなってきたものの、基本的地図情報や利用ソフトはまだまだ高価であり、何よりも行政が把握する地理情報が非開示であることから、その進捗状況は遅々たるものといってよかった。 そこに「地理空間情報活用推進基本法」の公布施行なのである。この情報を提供して頂いた[K.A氏]に再度感謝しお礼申し上げたい。

 同法は地理空間情報の活用推進を図る基本法であることから、全20条からなるコンパクトな法律であるが、そこに示されてあることは驚きに近いのである。同法はNSDI法ともいう。(NSDI:National Spatial Data Infrastructure:国土空間データ基盤整備の略語である。インターネット網が通信インフラであるならば、NSDIは、国土情報コンテンツのインフラなのである。

地理空間情報活用推進基本法

第一条 (目的)
 この法律は、現在及び将来の国民が安心して豊かな生活を営むことができる経済社会を実現する上で地理空間情報を高度に活用することを推進することが極めて重要であることにかんがみ、地理空間情報の活用の推進に関する施策に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務等を明らかにするとともに、地理空間情報の活用の推進に関する施策の基本となる事項を定めることにより、地理空間情報の活用の推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進することを目的とする。

第三条  (基本理念)
 地理空間情報の活用の推進は、基盤地図情報、統計情報、測量に係る画像情報等の地理空間情報が国民生活の向上及び国民経済の健全な発展を図るための不可欠な基盤であることにかんがみ、これらの地理空間情報の電磁的方式による正確かつ適切な整備及びその提供、地理情報システム、衛星測位等の技術の利用の推進、人材の育成、国、地方公共団体等の関係機関の連携の強化等必要な体制の整備その他の施策を総合的かつ体系的に行うことを旨として行われなければならない。
(中略)
6  地理空間情報の活用の推進に関する施策は、地理空間情報を活用した多様なサービスの提供が実現されることを通じて、国民の利便性の向上に寄与するものでなければならない。
8  地理空間情報の活用の推進に関する施策を講ずるに当たっては、民間事業者による地理空間情報の活用のための技術に関する提案及び創意工夫が活用されること等により民間事業者の能力が活用されるように配慮されなければならない。

第六条 (事業者の努力)
 測量、地図の作成又は地理情報システム若しくは衛星測位を活用したサービスの提供の事業を行う者その他の関係事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動に関し、良質な地理空間情報の提供等に自ら努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する地理空間情報の活用の推進に関する施策に協力するよう努めるものとする。

第十八条 (基盤地図情報等の円滑な流通等)
 国及び地方公共団体は、基盤地図情報等が社会全体において利用されることが地理空間情報の高度な活用に資することにかんがみ、基盤地図情報の積極的な提供、統計情報、測量に係る画像情報等の電磁的方式による整備及びその提供その他の地理空間情報の円滑な流通に必要な施策を講ずるものとする。
2  国は、その保有する基盤地図情報等を原則としてインターネットを利用して無償で提供するものとする。

 この法律の所管は「国土交通省国土計画局総務課・国土情報整備室」であり、公布日は2007年5月30日であり、施行日は2007年8月29日である。そして「驚き」なのは、第18条2項なのである。「国は、その保有する基盤地図情報等を原則としてインターネットを利用して無償で提供するものとする。」と規定されているのである。鑑定業界はこの機会を逃してはならないと考える。

 具体的な施策の公表はまだこれからであろうが、鑑定業界としても積極的に対応し、現在施行中である「取引価格情報開示制度:取引情報悉皆調査(新スキーム)」のさらなる充実と発展を期さなければならないと考える。
いつもながらの「Too Late & Too Fuzzy」な、協会であってはならないし、鑑定協会が動こうとしないのであれば、都道府県士協会が機動的に対応すべきであろうと考える。

 不動産価格情報を迅速に効果的に利便性高く、国民に提供してゆくことこそ、新制度における公益法人を目指す鑑定協会の事業第一目標にふさわしいのではなかろうか。幸いなことに主務官庁は御縁の深い「国土交通省国土計画局総務課・国土情報整備室」である。

 また法第七条(連携の強化)は、「国は、国、地方公共団体、関係事業者及び大学等の研究機関が相互に連携を図りながら協力することにより、地理空間情報の活用の効果的な推進が図られることにかんがみ、これらの者の間の連携の強化に必要な施策を講ずるものとする。 」と謳っているのである。この機を好機と云わずして、いつを好機と言い得ようかと考えるのである。

『関連サイト・コラム』
地理空間情報プラットフォーム
経済産業省:商務情報政策局 情報政策課 地理空間情報活用推進研究会(地理空間情報の活用推進)
 ここの第四回会合の配付資料の末尾に掲げられる参考資料は全体俯瞰図やビジネスモデルを示しています。また第三回配付資料(2)には、岐阜県の取り組みが説明されています。
県域レベルの大縮尺地図統合 ~ NSDI 構築に向けて ~(岐阜県)
地理空間情報活用推進基本法のインパクト
“国産Google Maps”が実現するか!?
法の成立を受け、今後の方針を議論
















 
 

 

 

 

 
by bouen | 2008-06-04 14:18 | NSDI:地理空間情報


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