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地頭力

 「地頭力を鍛える」という書籍をようやくに読了した。地頭力を鍛えるとは、何とも冴えない書名であるが、述べていることは随分とまともである。



 「地頭力を鍛える」細谷功著:東洋経済新報社刊
 インターネット情報への過度の依存が思考停止の危機を招き、検索ツールの発達による「コピペ(コピー&ペースト)族」が増殖しているいま、「考える」ことの重要性がかつてないほどに高まっている。これから本当に重要になってくるのはインターネットやPCでは代替が不可能な、膨大な情報を選別して付加価値をつけていくという、本当の意味での創造的な「考える力」、すなわち「地頭力」なのだ。

 では、地頭力とは何か。地頭力の本質は、「結論から」「全体から」「単純に」考える3つの思考力である。すなわち「結論から」考える仮説思考力、「全体から」考えるフレームワーク思考力、「単純に」考える抽象化思考力だ。

 また、この3つの思考力のベースとなるのが、論理思考力、直観力、そして知的好奇心 であり、地頭力の全体像は三層構造の図でとらえることができる。
 (東洋経済新報社サイトの惹句より引用)

 本書中に何度も引用される地頭力三層構造図がこれである。

 地頭力を鍛える強力なツールとなるのが「フェルミ推定」だ。「シカゴにピアノ調律師は何人いるか?」「日本全国に電柱は何本あるか?」「世界中で1日に食べられるピザは何枚か?」……。こうした荒唐無稽とも思える問いへの解答を導き出す考え方のプロセスを問うのが、「フェルミ推定」だ。「フェルミ推定」と呼ばれるのは、「原子力の父」として知られ、ノーベル物理学賞受賞者でもある、エンリコ・フェルミ(1901~1954)に由来する。

 「フェルミ推定」では、つかみどころのない数量、物理量について、何らかの推定ロジックを用いて短時間で概算すること、すなわち短時間で「あたり」をつけることができるかどうかがポイントとなる。
 (同じく、東洋経済新報社サイトの惹句より引用)


 6月来、茫猿はNSDI-PTに振り回されている。振り回されているというのは正確ではなく、自ら言い出したことに振り回されているのだから自業自得と云う方が正しかろう。いずれにしても、絵空ごととか世迷いごとと酷評されているのだから難渋していることには違いない。 ところで、この本を書店の平積み棚で見付け、パラパラとめくった挙げ句、茫猿の思考方法にさほどの問題はないと思い至ったのは、こういうことである。

『ベース:その1』
 先ず「NSDI-PT:地理空間情報基盤」というものに、何故関わるのかといえば、それは好奇心に他ならない。知的好奇心と自称するほどの自惚れはないから、好奇心でよい。面白いと感じたから手掛けてみようと思い立ったまでである。 それ以上でもそれ以下でもない。第一、どのような仕掛けでも当事者が面白いと思わなくて、他者を巻き込むことなどできはしないと、茫猿は常々考えている。

『ベース:その2』
 地理空間情報活用推進基本法という法律の存在を知った時に、追い風を感じたのである。同書が述べるところに敷衍すれば、「今動かずしていつ動く」と閃いたのである。直感と言えば直感であろう。
 さらに同法と、07年度より全国施行している「悉皆調査(新スキーム)」と、不動産&GISと論旨を展開してみると、帰結はNSDI-PTとなるのである。論理思考の赴くところと云えば言い過ぎだろうか。

『三つの思考力』
 さて、その次である。
NSDI-PTを説明すると、大半の鑑定士が関心を示すのは取引事例カードのGIS化であり、そこから踏み出そうとはされない。事例カードGIS化で思考停止するのである。でも、よくよく考えてみて欲しいのであるが、事例カードGIS化に止まれば、それは業益(共益)追求に終わってしまうのである。地理情報というものに関わる主体が国、地方自治体、民間各社と多岐に亘ることを考えるまでもなく、鑑定士が業益や共益だけでものを考えていれば、他者の積極的協力が得られようはずもないのである。

 「悉皆調査結果:不動産センサス」を国民へ有益な情報としてインターネットを介して開示するという、大義というか大命題なくして他者の協力が得られないどころか、自らの求心力もままならないことであろう。 このことを「仮説思考:結論から考える」と云うことであろうと、茫猿は理解するのである。
 何よりも2003年7月に「不動産取引価格情報の提供制度の創設」に関する意見募集が国交省において行われたのであるが、その時に(社)日本不動産鑑定協会は全詳細データ開示を公式見解として意見提出したのである。その経緯を考えれば、悉皆調査結果について、『現時点において、可能な限りの開示を目指す』というのが鑑定協会の公式見解であるべきなのである。

 不動産センサスを基礎として、国民に有益な不動産情報を開示するという目的のために、今先ず何を為さねばならないか、為すべきかと考えることが、「フレームワーク思考」なのであろうと思う。そこには目標設定と同時に到達予定時期という行程表も欠かせられないと云えるのである。
 画餅に見える目標が画餅に終始するのは、行程表を欠くからである。行程表を用意して、トライ&エラーを重ねて行けば、画餅も食える餅に転じてゆくと考えるのである。明らかになってくるボトルネックを一つ一つ解きほぐしてゆく、時には迂回してゆくことから、到達点が見えて来るであろうと楽観するのである。

 単純化思考については、こう考える。難しくあれもこれも考えるから障壁を前にして途方に暮れてしまうのである。REA-NETというツールを活用して事例のGIS化を図り、得た結果(GIS化情報)をインターネットを用いて国民に開示してゆく、細かいこと(餅)は餅屋に任せればよいのであり、鑑定士は不動産の専門家であればよいのである。車や書籍など様々なものについての有益な情報がiNetで無償提供されているという類似事象から類推すればよいのである。アナロジーとか単純化とはそういうことではなかろうかと思い至ったのである。

 いずれ詳しくアナウンスされるだろうが、NSDI-PTについてのプレゼンとかデモを11/21開催の鑑定評価シンポジウムに併せて行おうという日程も、08年度内にプロトタイプモデルの構築を終えようという目標日程も、いわばフレームワーク思考や抽象化思考の一形態であろうと適当に楽観的に考えるのである。

 しばらくは、「フェルミ推定」を遊びながら、NSDI-PTも楽しみながら関わってゆこうと思うのである。何よりも勇気づけられるのは、NSDI-PTをふれて廻ってみると鑑定士の反応はとても乏しいか事例GIS化止まりであるが、業界外や業際の人たちの反応はとても良いのである。茫猿が煽られるように感じる時すらある。NSDI-PTについて茫猿が楽観する最大の理由が其処にあるし、面白いと感じる由縁でもある。






 
by bouen | 2008-08-15 15:14 | 茫猿の吠える日々


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