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踏襲と浮舟

 こういう類の記事はあまり書きたくない。書いていても気が重いのである。だから極力避けてきたのだが、やはり一言はふれずにおけないのである。
 演説原稿の読み間違いを幾つも指摘されているのは、我が国のA総理である。 踏襲(トウシュウ)をフシュウと読み違えたそうである。他にも幾つかの読み違いを指摘されている。 さだめし、漫画ばかり見ていたから、漢字の多い文章は読み難いのだろう。それにプライドは人一倍高いから、六十幾つにもなって今さら、「この字の読みは?」などと周囲に聞くこともできないのであろう。



 「政局より政策」と言って、解散を先送りしたA総理だが、安倍、福田と三代続けて国民の審判を避けた総理の最大最高の政策は「解散総選挙で国民の信を仰ぐ」以外にはなかろうと思う。 先々代、先代からトウシュウ(踏襲)したつもりが、実は波間に漂うフシュウ(浮舟)だったというお粗末なのであろう。 政策という言葉を矮小化させ、政策とは定額一時金バラマキや高速道路日曜千円開放(ECT車限定というお粗末)に置き換えてしまったあたりの顛末がとても情け無く思える。 「解散総選挙」という国民に与えられる唯一無二の政治機会を、政局と矮小化させた罪は大きいと云える。

 A総理最大の経済対策(政策)が定額一時金配付だという。 配付基準も配付方法も地方任せで、とにかく配るという。 その財源は財政投融資余剰資金だという。 政策などと云うには、あまりにも恥ずかしい場当たり愚民政策である。 先ず、所得制限など配布基準地方任せなら、全額を地方交付税に置き換えてしまえばよいのであり、その使用方法は地方任せでよかろう。
 また、財源である財政投融資余剰金の本来の使途は国債償還資金であろうから、単に赤字国債の増発に置き換え、国債償還を繰り延べたに過ぎないのである。

 二兆円もの金額を細分してバラマク人気取り愚策を政策などと呼ぶのは烏滸がましいにもほどがあると云えよう。 A総理は烏滸がましいも「チョウキョがましい」としか読めないだろうが。
他に有効な使途が考えられないものだろうか、例えば、生活保護世帯への一時金支給とか、産婦人科救急病院の整備とか、高額所得者や中額所得者を除いた困窮世帯支援やホームレス対策なども考えられるだろう。 吉原で小判をばらまいた紀伊国屋文左衛門でもあるまいに、年末にも間に合わない小金バラマキなど愚策以外の何物でもない。

 もうひとつ気になるのは、定額減税や定率減税よりも、この定額一時金支給にこだわる某党の姿勢である。 うがち過ぎという誹りは承知の上でいえば、支持者に一定額の現金が年度内に渡ることを、とても期待しているように見えるのである。 支持者に渡ったあとのことは言わないし、想像もしない。 でも、かの党だけが一時金支給に熱心なのは何とも不思議に思える。

 A総理は文民統制の意味を理解していないのではなかろうかと思われる。 文民統制すなわちシビリアンコントロールとは、政治が軍をコントロールすることを云うのであり、軍の独走や暴走を政治が制御することを云うのである。 つまり、政治が大命題としていることに従わない軍人は排除するという原則なのである。 専守防衛、非核三原則は言うに及ばず村山談話遵守しかりである。 何よりも憲法を遵守する義務を果たさない軍隊など、単なる武装集団に過ぎないのである。

 この点に関しては野党も責められるのであろうが、国会質疑や参考人質疑の根本は、この一点に置くべきであろう。 T前航空幕僚長に糺すことはただ一つ、「あなたは憲法を遵守しますか、憲法99条を承知していますか?」で十分であろう。 A総理に伺うべきことも同様であろうし、「その観点からして、円満定年退職を容認しますか?」で十分であろう。  定年退職前なら何を言っても構わないでは、組織の体を為さなく成るであろうと考えられないのだろうか、とても不思議である。

 何とも理解できなことが続いている昨今の政治である。 「百年に一度という未曾有の経済危機」というに、全治三年と診断するのである。 しかも経済危機の対処法も回復の兆しも見えていないのに、三年後に消費税率アップと宣うとはナントモハヤである。 第一、国家の指導者が百年に一度の危機などと、国民心理をマイナスに煽ってドウスルというのであろうか。 茫猿は遠吠するのみであるが、しかし云うべきは云っておくのである。
by bouen | 2008-11-13 15:39 | 茫猿の吠える日々


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