公益法人改革と連合会移行

 鑑定協会役員の二年間の任期がその最終四半期を迎えつつある08年度末の昨今、次年度の鑑定協会の大きな事業テーマである「公益法人制度改革対応方針」と「鑑定協会連合会体制移行の基本方針」に関して所管する企画委員会では鋭意審議が進められつつあり、三月理事会あるいは次期総会において各指針が示されようとしている。



 茫猿は公益法人改革も連合会移行も時代の潮流の赴くところ必然であろうと考えることから、大枠について異論は持たないが、その進め方や日程表については、地方社団法人構成員の立場から疑念を払拭できないでいる。大枠については既に一昨年来の鑑定協会理事会において、それらの承認が完了済みとは云うものの、いずれ雌鳥が先か卵が先かの類の議論に墜ち入りがちではあるとしても、全国の会員の認識向上と全国各都道府県士協会の意志決定が優先されてもよいのではと考えるのである。 それは、今後の全国各士協会の在り方に大きく影響を与えかねないと懸念するからでもある。

一、先ず両改革の事実経緯について述べる。

第254回理事会(2007/03/20開催:議事録より)
議事録(7)「公益法人制度改革への対応方針(第一次報告)」について
 士協会・会員向けにとりまとめられた公益法人制度改革の概要及び当該改革への鑑定協会としての対応方針(第一次報告)を承認した。

議事録(8)「鑑定協会の連合会体制への移行に係る基本方針」について
 鑑定協会の連合会体制への移行に向けた当該基本方針を承認した。

第266回理事会(2008/11/18開催:議事録より)
議事録(2)「公益法人制度改革への対応方針について(第二次報告)」について
 公益法人制度改革の概要及び当該改革への鑑定協会としての対応方針(第二次報告)を承認した。公益法人制度改革への対応方針について(第二次報告)は2008/12/04付けにて公表された。

二、次いで、公益法人改革の関連法等について述べる。

公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律
(平成十八年六月二日法律第四十九号)

第七条 (公益認定の申請) 
 公益認定の申請は、内閣府令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書を行政庁に提出してしなければならない。
一  名称及び代表者の氏名
二  公益目的事業を行う都道府県の区域(定款に定めがある場合に限る。)
   並びに主たる事務所及び従たる事務所の所在場所
三  その行う公益目的事業の種類及び内容
四  その行う収益事業等の内容


モデル定款試案より
(財団法人公益法人士協会:http://www.kohokyo.or.jp/teikanan.pdf)

公益目的事業:第5条 
この法人は、第3条の公益目的を達成するため、次の事業を行う。
()
()

(n)その他公益目的を達成するために必要な事業
 前項の事業については、東京都及びその周辺県において行うものとする。


三、地方社団法人・士協会における課題
1.公益認定とその現状
 認定法第15条は、公益法人における公益事業比率について、以下のように定めている。
「公益法人は、毎事業年度における公益目的事業比率(第一号に掲げる額の同号から第三号までに掲げる額の合計額に対する割合をいう。)が百分の五十以上となるように公益目的事業を行わなければならない。

 このことは、鑑定協会においてはさほどの問題とはならない。なぜなら、鑑定協会における主要事業は「地価公示取り纏め事業」であり、それは公益事業として認定される確率が高いと考えられているからである。「公益法人制度改革への対応方針について(第二次報告)08/11/18開示」の46頁の記述を抜粋引用すれば以下の通りである。

『鑑定協会関係では、地価公示、地価調査、相続税評価、固定資産税評価という公的土地評価が公益目的事業に該当するか否かが最大の論点です。 従来より地価公示、地価調査については該当する可能性が高いと所管庁よりの意見を得ています。(中略)一般の鑑定評価と異なり、大量で多数のポイントを短期間で均衡化、適正化を図り、かつ結果も当然公表されるという作業は、発注主体が誰か、契約上の競合があるか否かに関係なく不特定多数の者の為に多大な貢献をしていることは事実です。(中略)こうした公的土地評価が公益目的事業に該当する可能性は高いと推察されます。』


 つまり、こういうことである。鑑定協会は、四大公的評価の内、地価公示と地価調査各々の取り纏め事業については公益事業に該当する確率が高いと考えるものであるが、他の相続税評価、固定資産税評価については未だ推察段階なのである。

 『公益認定』は認定法7条に規定する申請を行い、しかるべき後に公益認定を受けることとなるから、事前に当該事業が公益認定対象事業であるか否かは判断できないのであり、あくまで類似事業の認定経緯やヒヤリング等により推定する以外にはない。だから、現時点において「固定資産税評価取り纏め事業」が、『公益認定』対象となり得るか否かは断定できないのである。

2.取り纏め業務
 地価公示等について鑑定協会や士協会の事業関与を「取り纏め業務」と表するのは、当該団体が不動産鑑定評価作業そのものを行うものではないこと、並びにその地価公示等業務を推進するために必要な請負業務であり、地価公示仕様書「第2、請負業務」等に記載される業務全般を指すものであることによる。

3.地方社団法人士協会の課題
 都道府県士協会における現在の主要事業は「地価調査取り纏め受託事業」と「固定資産税評価取り纏め事業」であろうと推定できる。(この件について、実態調査が行われたか否かも含めて、地方社団法人の実態は公表されていない。)
 同時に、地価調査受託においては、少なからぬ都道府県において指名競争入札が実施されているのは周知のことである。
 また固定資産税評価受託においても同様である上に、受託主体は士協会、事業協同組合、一般営利法人等多岐に渡っていること、並びに業務獲得機会と結果において不均衡が存在することも周知の事実である。

 このような実態、特に固定資産税評価における契約上の競合という実態を考えてみれば、地方社団法人士協会が公益法人化を目指すとして、その定款に「固定資産税評価取り纏め事業」を明記することに関して、直ちに会員の理解が得られるか否かを懸念するのものである。

 即ち、「固定資産税評価」を公益事業として士協会定款に明記し、「地価調査に準拠した業務執行体制を整備」することにより、「士協会会員の固定資産税評価に関する業務獲得機会の均衡化を図ること」が、士協会公益法人化の大命題あるいは最大の論点となるであろうと予想するのである。
 当然のことながら、地価調査並びに固定資産税評価取り纏め業務に関して、各都道府県士協会はその定款に公益事業として明記し、「士協会公益事業の柱」と位置づけるべきと、筆者は考えるものである。

 であればこそ、鑑定協会の公益法人化並びに連合会化を急ぐことと並行して、各都道府県士協会の公益法人化に関して周知を徹底し、その総意としての賛同を得られるべく努力するべきではなかろうかと提唱するものである。 鑑定協会は固定資産税評価という事業の業界における位置付けを明確にし、その在るべき姿を明示してゆくと同時に、会員の意識向上、特に共助意識の醸成を図るべきではなかろうかと考えるのですが、如何なものでございましょうか。

 なお蛇足ながら、茫猿は以上に記しましたような懸念が、茫猿一人の杞憂に終わるべく願っていることも、付け加えさせていただきます。
更に付け加えれば、公益事業としての平成24年固評評価替えを視野に入れるのであれば、昨年末に「特例民法法人に移行している社団法人士協会」は公益法人化を急がなければならないのである。 多くの市町村が業務委託発注を開始するまで、それほど多くの時間は残されていないのである。

『追記』
 『鄙からの発信』アーカイブより、関連する過去のエントリーうち、主なものを表示しておきます。

公益法人改革の陥穽」(07.09.25)

忍び寄る危機」(07.10.15)

公益法人改革:読者のお尋ね」(08.07.20)

公益法人改革&連合会化の要件」(08.11.21)
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by bouen | 2009-01-09 17:42 | 不動産鑑定


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