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総会質問

 翌日に地元の行事があることなどから出欠を迷っていました鑑定協会定例総会に出席することとし、総会での質問通知書を本日発送しました。 質問事項と茫猿の考え方を記事にします。 総会後の懇親会では、今年度NSDI-PTについてプロモートをしてこようと考えています。

 ところで、茫猿は2004年総会である質問を行いましたが、会員質問書の事前配布もなく、記事にあるような疑問の残る総会運営がなされました。それに較べれば2008年総会では各会員からの質問書コピーが事前に配布され、回答も丁寧であったと記憶します。 鑑定協会は近く連合会移行が予定され、現行の総会運営はあとせいぜい2回程度で、以後は代議員総会に移行する予定です。 会員の権利であり義務でもある総会出席の機会はあと僅かであると思えば、今年の総会出席はそれなりに意味有るモノと考えられるのです。 なんであれ、多くの会員が総会に出席し、疑問点は糺してゆくことが、総会だけでなく執行役員により高い緊張感をもたらす効果があるものと考えます。



質問一、新スキームについて(総会書類73頁5項)

 新スキームが全面施行されて既に三年になります。いつまでも新スキームという呼称ではなかろうと思われます。調査の実態を的確に表す表現、例えば土地センサス、せめて取引価格悉皆調査などという表現を採用される時期に至っていると考えますが、如何お考えでしょうか。

《茫猿の考え方》
 新スキームが、地価公示スキームにおける新しい取引事例収集体制として登場し検討が開始されたのは2004年のことである。その後2005年2006年の試行期間を経て2007年より全国調査が施行されているものである。
 そもそも新スキームは国交省が行う不動産取引価格情報開示制度の一環として位置づけられ、開示価格情報について調査報告するとともに地価公示等業務にも利活用することを目的として発足している。

 しかし、制度が本格運用されて既に数年が経過した現在においてなお、「新スキーム」という名称を用いていることが妥当であろうかと疑問に思うのである。 新スキームは単なる取引事例調査体制ではない。 国民に正しい不動産情報を提供して不動産市場の活性化と透明化を図ることが目的とされるものであり、実態を正しく表さない名称をいつまでも使い続けて事業の矮小化につなげてはならないと考える。

 名は体を表すとも、新しき酒(事業)は新しき革袋(名称)にともいう。 速やかに呼称を【不動産センサス】あるいはせめて不動産取引悉皆調査くらいに改めることにより、事業本来の目的である「国民へ的確・迅速な不動産情報提供」を推し進めてゆくべきではないかと考える。
 新スキームで調査対象とされているのは宅地、建物と敷地取引だけではなく、区分所有権、農地、林地等民間不動産取引が網羅されているのであり、それら全情報の有効活用と分析結果の社会還元が喫緊の課題であると考える。

質問二、関心を持って頂きたい関係機関の調査研究(同、75頁2-(2)項)

 国土交通省土地・水資源局・土地政策課が、2008.06.05付けで公表している調査研究に、「敷地細分化抑制のための評価指標マニュアル」というものがございます。 また、第269回理事会では、「三次データの外部提供について」という報告が行われたと伺っております。

 敷地細分化抑制のための評価指標マニュアルの内容は、まさに不動産評価論そのものであると考えます。 さらに、国交省を通じて外部提供を要請してきた「吉田二郎・東京大学常勤講師」は国土審議会専門委員など経済産業省・国土交通省の研究会委員を歴任される、金融経済学(資産価格)、不動産経済学の専門家です。吉田氏の研究テーマはネット公開情報によれば「一般均衡における資産価格、特に人的資本と住宅を考慮にいれた場合に資産価格が相互にどう関連するか、またプライシング・カーネルがどういった特性を持つか、等を研究している。更に、資産価格や収益率の予測可能性、価格指数の構築についても研究している。」とあります。 吉田氏は鑑定協会の特別会員に推戴しても差し支えない方と思われます。

 鑑定協会会員がヘドニックアプローチやプライシング・カーネルを容易に理解できるとも、それら研究成果を直ちに鑑定評価に援用できるとも考えませんが、それらは鑑定評価が科学としてさらにその位置を高めてゆくであろう得難い機会と考えますが、如何お考えでしょうか。

《茫猿の考え方》
 前項質問における茫猿の考え方でも示したが、取引価格情報悉皆調査結果は国民の財産であり、鑑定協会は当該調査を受託し管理を委託されているだけである。 また並行して地価公示業等への利活用が認められているものである。 本来の事業目的に照らせば、鑑定協会は業益優先の考えから速やかに脱却して公益優先を明確にすべきであろうと考える。

 これは、単純に価格情報の全面開示を意味するモノではない。 全面開示が国民にとって直ちには有益なモノとも考えられないし、社会もその意向を示しているとは認められない。 一次から三次に至る調査結果を分析して、有益有効な情報として社会に還元してゆく事業に着手すべきと考えるのである。

 この取引価格情報の分析を鑑定協会単独で行うことは、協会が有する資金力、マンパワーのいずれをとっても非力を認めざるをえず、業界外との協力が不可欠であろうと考える。国交省における「敷地細分化抑制のための評価指標マニュアル」研究や、国交省を通じた「三次データの外部提供について」要請などは、よき機会であろうと考えるのであり、積極的な対応が望ましいと考える。 なお研究目的の外部提供要請については最近に始まったことではなく、05、06年当時の国交省における制度検討委員会において既に話題となっていたことでもある。

 研究目的等外部提供については、当然のことながら、外部提供は本来の業務主務者である所管庁主導で行われるものであるが、鑑定協会はそれについて消極的であってはならないと考えるモノであり、「閉鎖的な鑑定協会」などとマスコミ種になっても困ることだと思われるのである。
 変化の速度が早い現代では「リスク・テイク」がよく話題になりますが、「リスクを取ろうとしないこと(危険を負担しないこと)が、最大のリスク(危険)」と考えることはできないのでしょうか。

質問三、地理空間情報の活用について(同、74頁5項)

 各位のご理解のおかげで、地理空間情報活用については昨年度NSDI試用版モデルを構築して全会員に公開できました。 しかし、今年度運用版モデルの構築並びに情報開示モデルの構築に着手するに際しては、協会内部においては関係する委員会相互の緊密な連携、試験運用に参加していただける士協会や地価公示分科会の募集、さらにNSDIモデルは地価公示業務や取引価格悉皆調査(新スキーム)と不即不離の関係にあることから関係機関の理解と支援が不可欠であると考えますが、如何お考えでしょうか。

《茫猿の考え方》
 既にこのサイトのカテゴリ・NSDI-PTで何度も繰り返して提唱していることだから再掲はしないが、質問一、質問二と関連する事項であり、悉皆調査に基づく分析結果の社会還元、研究を目的する外部提供並びに共同研究の基礎資料をより意味有るものにするためには、地理情報を加えた地価情報の三次元化が必須であると考える。 さらに国、都道府県、市区町村、関連団体等が有している地理情報をリンク一体化して不動産情報をより立体的に構築してゆくことも急務であろうと考える。

 その目的を果たすためには現NSDI-PT(地理空間情報活用検討小委員会)を発展させて、関連する地価調査委員会、情報安全活用委員会、業務推進委員会等との連携を密にしたプロジェクトチームを構築して、有機的かつ効率的に機能する組織とすべきであろうと考える。 ただし、特別委員会設置などという組織イジリを提唱するモノではない。 プロジェクトチームの機能強化と弾力的運用を求めるのみである。
by bouen | 2009-06-09 18:31 | 不動産鑑定


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