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逆風のなか会館建設に邁進 -1-

 鑑定業界にとってとても大きなニュースが、昨日は2件も飛び込んできた。
書きかけの原稿が数件有るし、タイムリーに書き上げておきたい記事もあるのだが、全て後回しにして、この2件について考えてみる。

 2件の一つは、事業仕分け第二弾の対象とする「公益法人の仕分け基準7要件」が公表されたことである。 いま一つは不動産鑑定会館建設についての答申案公表である。答申案は03/02開催の協会常務理事会で了とされたか、否とされたかまだ不明であるが、昨秋以来の協会執行部関心事というか最優先課題と見えるから、その動向から目が離せない。




 先ずは公益法人仕分け七要件である。 枝野行政刷新担当相は3月2日に、「事業仕分け第2弾」の対象とする公益法人を選定する際の「7基準」を公表した。

 七基準とは次の通りである。 その判定基準細目が不明だから、社団法人日本不動産鑑定協会が各基準に該当するか否かは軽々に判定できないが、一旦は俎上に上がったという、昨秋の事業仕分けの経緯を知れば、なおざりにはできないと考えられる。

 公益法人仕分け七基準
(1)07年度に1000万円以上の公費支出を受けた(1306法人)
(2)国から権限を付与されている(598法人)
(3)収入に占める公費からの支出が5割以上(365法人)
(4)天下りを受け入れている(2353法人)
(5)財産が10億円超(1448法人)
(6)地方自治体から支出を受けている(825法人)
(7)国からの公費支出を受けつつ、事業をさらに外部に委託している(24法人)

 鑑定協会について、その該当の有無を考えてみると、
《1》地価公示受託事業等は公費支出に該当するのか?(総会書類
《2》地価公示関連や新スキーム調査関連、実務修習関連等は権限にあたるのか?
《3》地価公示、地価調査、新スキーム調査事業費の協会収入に占める割合は?(総会書類
《4》天下りに該当するか不明だが、役員のひとりは官僚OBである。(協会役員
《5》正味財産額は?(総会書類
《6》地価調査は地方自治体からの公費支出に該当するのか?(総会書類
《7》地価公示等事業実施の実態に照らした判断は?

 以上七要件について、各々に該当するか否かは協会事務局の見解等を待たねばならないが、幾つかは該当すると考えておいて然るべきと思われる。 地価公示の民営化などと先走ったことを述べるつもりはないが、官需依存姿勢から脱却することを視野に入れなければならない時期が既に到来していると考えられるのである。

 そうでなくとも、2010年地価調査は全国各地で20~30%の地点数削減が避けられない状況にあると聞き及んでいる。しかも、この傾向は数年続くと見込まれるから、近い将来に地価調査の半減、場合によっては全廃もあり得ると考えておくべきであろう。
 地価調査のみならず、地価公示も実施区域の縮減や実施体制の改訂等が検討されていると聞く。 地価公示実施区域の縮減は、「いわゆる新スキーム調査(悉皆調査)実施区域」の縮減と直結するのである。 全国一律に実施されている、鑑定評価の最大かつ最重要基礎資料収集体制の根幹が揺らいでいると云えるのである。

 固定資産税標準宅地評価についても、全国の自治体では財政逼迫の折から、その縮減が検討されていると聞く。 既に始まっているH24年度評価替えにおいても、地点数削減、評価報酬切り下げが起きているようだが、この傾向はH27年度評価替えに向けて加速する様相である。 所管する総務省においても縮減検討が俎上に上がっているという。

 幾つかの枢要な事業収入に大鉈が振るわれようとしているだけでなく、事例収集という鑑定評価の基盤を揺るがしかねない事態が起きようとしているのである。 まさに四面楚歌状況であり、これを鑑定評価の危機と言わずして何を危機と言おうかという状況である。

 この期に及んでなお、新スキーム調査の会員負担(役務負担、経費負担)についてとか、事例閲覧料の徴収などと、些末とも本末転倒ともいえる事柄で紛糾しているとも耳にするのである。 鑑定士たるものは、大事を協会任せ役員任せにして、日々の業務に追われていてはならないのである。 いわゆる公的評価(公示、調査、相評、固評)の来し方行く末について、自らの判断が求められているのである。

 取引事例についても、その収集体制だけでなく、鑑定評価における位置付け、不動産価格情報というものの公益的根元的性質、その情報の有り様並びに開示方法などについて、これまた自らひとりひとりの判断が求められているのである。 総てを従来どおりの所与とし、己は日々の評価業務に没頭するだけという視野狭窄状態は、今や許されないと知るべきである。
《この稿は次号記事に続く》
by bouen | 2010-03-03 05:20 | 茫猿の吠える日々


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